【ディフレクション完全ガイド】サッカーの勝敗を分ける「運」と「技術」の全貌
h2 ディフレクションとは?試合の流れを一変させるボールの軌道変化
「ディフレクション(Deflection)」という言葉を聞いたとき、多くの方は「運悪くボールが当たってゴールに入ってしまった」という、少しネガティブなシーンを思い浮かべるかもしれません。
確かに、ディフレクションはサッカーにおいて試合の流れを大きく左右する重要な現象です。具体的には、シュートやパスなどのボールが、選手(味方・相手を問わず)やゴールポスト、クロスバーといった他の物体に接触し、その軌道が変わる現象全般を指します。
この現象がゴールキーパー(GK)にとってどれほど厄介かは、データが明確に示しています。ある分析によれば、ディフレクションが絡んだ得点率は、通常のシュートに比べて劇的に跳ね上がるとされています。
- 強力なシュートがディフレクションした場合:45%の確率で得点
- クリアミスによるディフレクション:30%の確率で得点
- ポストやバーからの跳ね返り:15%の確率で得点
GKはシュートの軌道を予測して反応しますが、ボールが他の選手に当たって軌道が変わると、その瞬間に反応がコンマ数秒遅れてしまいます。わずかな軌道の変化が、GKにとっては致命的な状況を生み出すのです。
このように、ディフレクションは単なる「運」の要素として片付けられるものではありません。守備側にとっては「防ぐべき最大のリスク」の一つであり、攻撃側にとっては「意図的に狙うべき戦術」にもなり得ます。
そして、このディフレクションが最も大きな議論を呼ぶのが、オフサイドの判定が絡んだ場合です。守備側の選手に当たったのにオフサイドになるケース、ならないケースがあり、多くのファンが混乱する原因となっています。この記事では、その最も難解なルールから、攻守の実践的なテクニックまで、ディフレクションのすべてを徹底的に解説していきます。
【最重要】難解なオフサイドと「ディフレクション」の全解説
サッカー観戦をしていて、「今のプレー、ディフェンダーに当たったのになんでオフサイドなの?」と疑問に思った経験は、誰にでもあるはずです。
この疑問こそ、「ディフレクション」を理解する上で最も重要な核心部分となります。結論から申し上げますと、守備側の選手がボールに触れたとしても、その触り方によって「オフサイドがリセットされる場合」と「リセットされない場合」の2つに厳密に分けられるからなのです。
ここでは、2022年に国際サッカー評議会(IFAB)および日本サッカー協会(JFA)から世界中の審判員や指導者に向けて通達された最新のガイドラインに基づき、この複雑なルールを解説します 2。この通達の背景には、守備側競技者がボールに触れたすべてのケースでオフサイドがリセットされるわけではない、という考え方を明確にする目的がありました。
なぜ判定が分かれる?「意図的なプレー」と「ディフレクション」という決定的な違い
まず、サッカーの競技規則における大原則として、オフサイドポジションにいる競技者が利益を得ることは反則となります。
しかし、競技規則第11条には例外があります。それは、「相手競技者が意図的にプレーしたボール」を受け取った場合です。この場合は、オフサイドポジションにいても反則とはみなされません。
つまり、審判は守備側選手のボールへの接触を、瞬時に以下の2種類に分類して判断しているのです。
- 意図的なプレー (Deliberate Play)
- その選手がボールをコントロール下に置いて、次のプレー(味方へのパス、ボールの保持、クリアなど)をしようとした行為を指します。
- 非常に重要な点として、たとえそのプレーがうまくいかなかったり、失敗したりした場合(例:クリアミス)であっても、「意図的にプレーしようとした」という事実は消えません 2。
- 判定への影響: 守備側が「意図的なプレー」をしたと判断されれば、オフサイドはリセットされます。そのボールがオフサイドポジションの攻撃側選手に渡っても、オンサイド(反則ではない)となります。
- ディフレクション (Deflection)
- ボールが単に選手に「当たっただけ」の偶発的な接触や、予期せぬボールに対する反射的な反応を指します。選手側にボールをコントロールする意図や時間がなかった状態です。
- 判定への影響: 守備側の接触が「ディフレクション」と判断されれば、オフサイドはリセットされません。そのボールがオフサイドポジションの攻撃側選手に渡れば、オフサイドの反則が成立します。
この2022年の通達は、単なるルール変更ではありませんでした。「意図せず反射的にブロックしたディフェンダーのプレーによって、オフサイドポジションで待っていた攻撃側が利益を得る」という、サッカーの原則から外れた状況を是正するための「明確化」です。これにより、守備側の意図しないプレー(ディフレクション)は、攻撃側のオフサイドを帳消しにしない、という点が世界共通の認識となりました。
【表で一目瞭然】「意図的なプレー」と判断される5つの基準
では、審判は何を基準に「意図的だった」のか「反射的(ディフレクション)だった」のかを判断しているのでしょうか。
IFABとJFAは、競技者がボールをコントロール下に置いていたか、つまり「意図的なプレー」であったかを示すための具体的な指標を5つ提示しています 2。この基準を知ることで、中継を見ていても判定の意図が明確に理解できるようになります。
「意図的なプレー」と判断されるための評価基準
| 評価基準 | 意図的なプレー (オンサイドになりやすい) | ディフレクション (オフサイドになりやすい) |
| 1. ボールの視認性 | ボールが長く移動し、競技者がはっきりと見えていた | 予期せぬ至近距離からのボールで、見る時間がなかった |
| 2. ボールの速度 | ボールが速く動いていなかった | 弾丸のような速いボールで、反応するしかなかった |
| 3. ボールの方向 | ボールの動いた方向が予想外ではなかった | 誰かに当たり、予期せぬ方向に飛んできた |
| 4. 身体の準備時間 | 競技者が体の動きを整える時間があった | 反射的に体を伸ばしたり、ジャンプせざるを得なかった |
| 5. ボールの種類 | グランド上(地上)を動いているボール(比較的容易) | 空中にあるボール(比較的困難) |
このテーブルは、判定のロジックを理解するために非常に有効です。例えば、目の前の相手からシュートを打たれ、「反射的に体を伸ばして(基準4)」ブロックした結果、ボールがこぼれた場合は「ディフレクション」と判断され、オフサイドが適用されやすくなります。
逆に、相手のロングパスが「ゆっくりと(基準2)」「長い距離を移動し(基準1)」「体の動きを整える時間があった(基準4)」にもかかわらず、クリアを失敗してしまった場合は、「意図的なプレー」と判断されます。そのこぼれ球をオフサイドポジションの選手が拾っても、オンサイドとなる可能性が極めて高いのです。
ケーススタディ:Jリーグ名古屋vs湘南戦「世紀のオフサイド判定」を分析
この新ガイドラインがどのように適用されるのか、具体的な事例を見ていきましょう。
2023シーズンのJ1リーグ第9節、名古屋グランパス vs 湘南ベルマーレの試合で、まさにこのルールが適用された象徴的なシーンがありました。
プレーの概要:
- 湘南の選手がペナルティエリア手前からシュート(またはクロス)を打ちました。
- このボールが名古屋の米本選手の足に当たりました。
- こぼれたボールを、オフサイドポジションにいた湘南の阿部選手が押し込み、ゴールネットを揺らしました。
判定:
VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の介入の結果、このゴールはオフサイドと判定され、取り消される事態となりました。
なぜオフサイドになったのか?(専門家の解説)
この判定の鍵は、名古屋・米本選手のプレーが「意図的なプレー」ではなく「ディフレクション」と判断された点にあります。
元国際審判員の家本正明氏の解説によれば、以下の点が指摘されています 4。
- 攻撃側選手(タリク選手)の動きによる影響: 米本選手が反応する直前、別の攻撃側選手(タリク選手)がボールをスルーする(触らずにまたぐ)動きをしました。
- 守備側の予測困難性: この「スルー」という予期せぬ動きが、守備側である米本選手の意思決定を困難にさせ、選択肢を揺さぶりました。
- 結論=「反射」である: 米本選手にはボールを判断する時間や距離はあったものの(基準1, 4を満たしそうに見えた)、直前のアタッカーの動きによって「反応」させられた結果のプレーであり、コントロール下にあったとは言えない、と判断されました。
- 適用されたガイドライン: このように、攻撃側の動きが守備側の予測を困難にさせた場合の接触は、「ディフレクション(反射)」として扱われる、というFIFA/JFAの解釈が徹底されたのです 。
この事例は、先ほどの5つの基準だけでは判断できない、さらに高度な「攻撃側の関与が、守備側の意図的なプレーを妨げたか」という第6の視点が存在することを示しています。米本選手のプレーは、単体で見れば「意図的」に見えるかもしれませんが、タリク選手の動きとセットで見ることで「反射」に変わるのです。これが、このルールが最も難解であると言われる理由です。
ディフェンス編:不運なディフレクションを防ぐ「シュートブロック」6つの鉄則
オフサイド判定だけでなく、ディフレクションは守備選手にとって失点に直結する最大の脅威の一つです。
特にペナルティエリア内でのシュートブロックは、単に体を投げ出すだけでは不十分です。不用意なブロックは、かえってコースを変えてGKの逆を突き、失点を招きます。ここでは、ジュニアサッカー(U-12年代)の指導からプロレベルまで共通する、シュートブロックの6つの鉄則を紹介します 5。
鉄則1:シュートの種類を読む(予測)
- 結論(Point): 相手がどのようなシュートを打とうとしているかを予測します。
- 理由(Reason): 相手がインサイドキックで巻いてくるのか、インステップで強く叩くのか、あるいはフェイントを入れてくるのかで、守備側が詰めるべき距離や体の向きが変わるからです 5。
- 具体例(Example): 相手が右足で巻くシュート(カーブ)を狙っているなら、そのコースを消す位置に立ちます。予測能力を磨くには、守備選手自身が攻撃の練習に参加し、攻撃側の心理を理解することが効果的であるとされています 5。
- 結論(Point): 闇雲に飛び込まず、まず相手の動きとシュートの種類を予測することが第一歩となります。
鉄則2:簡単に体を投げ出さない(我慢)
- 結論(Point): 焦ってスライディングタックルのように体を投げ出してはいけません。
- 理由(Reason): 簡単に飛び込むと、相手がフェイント(キックフェイントなど)を入れた瞬間に完全にかわされてしまい、無防備な状況を作ってしまうからです 5。
- 具体例(Example): ブロックに行く際は、まず相手に接近し、フェイントにも対応できる体勢を維持します 5。最後の最後まで我慢し、シュートを打たれる瞬間に、届かないと判断した場合にのみ、体を投げ出して足を最大限に伸ばしてブロックします。
- 結論(Point): 「飛び込まない勇気」が、結果として失点を防ぎます。
鉄則3:ペナルティエリア内外で守備を変える(判断)
- 結論(Point): ブロックする場所が、ペナルティエリアの中か外かを強く意識します。
- 理由(Reason): エリア内でファウルやハンドを犯した場合、即座にPK(ペナルティキック)という絶望的な状況を招くからです 5。
- 具体例(Example): エリアの外であれば、多少の接触覚悟で体をぶつけるようなブロックも選択肢に入ります。しかし、エリア内では接触を最小限にするクリーンなブロックが求められます 5。相手がドリブルでエリアに侵入しようとしているなら、そもそもエリア内に入らせない守備が最優先されます。
- 結論(Point): エリア内での守備は、リスク管理がすべてです。
鉄則4:絶対にハンドをしない(規律)
- 結論(Point): ブロックの際、腕や手にボールが当たらないよう細心の注意を払います。
- 理由(Reason): 意図的でなくても、PKを取られて失点すれば、チームにとってこれ以上ない損害となるからです。
- 具体例(Example): ブロックの際は、腕を体に密着させるか、体の近くに保持します。これにより、ボールが手に当たる確率を物理的に減らします。海外の選手が見せるように「手を後ろに組む」方法もありますが、これは体のバランスを崩し、反応速度を遅らせる可能性があるため、推奨されません。
- 結論(Point): 腕は体に密着させ、クリーンなブロックを徹底します。
鉄則5:股抜きシュートを警戒する(技術)
- 結論(Point): ブロックのために出した足の「股下」を抜かれないようにします。
- 理由(Reason): 股下を抜かれたボールは、GKにとって完全な死角(ブラインド)となり、反応することが極めて困難になるからです。攻撃側には、意図的にこの股抜きを狙う選手もいます。
- 具体例(Example): 対策は2つあります。1つは、ブロックする足をできるだけ地面に近づけて低く構えることです。もう1つは、軸足(ブロックしない方の足)を、ブロックする足の股下に滑り込ませるように配置することです。
- 結論(Point): 最後の砦として、股下というわずかな隙間を意識して閉じることが重要です。
鉄則6:ゴールキーパーと連携する(協調)
- 結論(Point): シュートブロックは、GKと協力して行います。
- 理由(Reason): GKとの連携により、守備側は「捨てるコース」と「守るコース」を明確に分担でき、無理なブロックを減らせるからです 5。
- 具体例(Example): GKがニアサイド(近い側)をカバーしていると確認できれば、ディフェンダーはファーサイド(遠い側)へのシュートコースだけを消すことに集中できます。この連携がないと、ディフェンダーがGKの守備範囲までブロックしようとして逆効果になる場合があります。
- 結論(Point): GKと連携し、組織的にゴールを守ることが求められます。
オフェンス編:幸運を必然に変える「意図的なディフレクション」戦術
ディフレクションは、守るだけのものではありません。優れた攻撃選手は、ディフレクションを「意図的に」引き起こし、得点チャンスに変えています。
守備側が密集していてシュートコースがないように見えても、相手ディフェンダーやGKを「利用する」ことで、ゴールへの道筋は生まれます。ここでは、そのための具体的な2つの高等テクニックを紹介します。
戦術1:GKの死角を生む「股抜きシュート」の極意
密集したエリアで最も効果的な戦術の一つが、ディフェンダーの「股抜き」を狙ったシュートです。
- なぜ股抜きを狙うのか?
- ディフェンダーの股下を通過したボールは、GKの視野から一瞬消えるため、反応が遅れます 6。これはディフェンダーがGKの「ブラインド」になる現象を利用した戦術です。
- また、シュートブロックに来た相手の足が届きそうで届かない場所(股下)は、相手にとっての「アキレス腱」となります。ペナルティエリア内での攻防は、まさにこの「股を閉じるDF」と「股を狙うFW」のミクロな駆け引きなのです。
- 股抜きを成功させるコツ
- 間合いの意識: GKやDFに近すぎると足を出されて奪われ、遠すぎると反応されます。「反応もされず、足も出されない」完璧な距離感を見極めます。
- 意識の分散: 左右へのフェイントをかけ、「股抜き」以外の選択肢(左右へのシュート)も持っていると相手に意識させます。
- タイミング: 相手が足を出した瞬間に、その開いた股下を狙い撃ちます。
戦術2:GKのタイミングをずらす「ケンケン」シュート
GKとの1対1の場面で、相手の反応タイミングを意図的にずらし、ディフレクションを誘う高等技術があります。それが「ケンケン(片足飛び)」を入れるシュートです。
- 「ケンケン」シュートとは?
- ドリブルからシュートを打つ直前に、あえて片足で「ケン、ケン」と小さくホップする動きを入れます。
- なぜ効果があるのか?
- 結論(Point): GKの「予測」を裏切ることができるからです。
- 理由(Reason): GKは通常、オフェンスの選手の足の振りや体の動きを見て、シュートのタイミングを予測し、動き出します。
- 具体例(Example): そこで攻撃側が「ケンケン」という通常のリズムとは異なる動きを入れると、GKが予測していた「動く反応」のタイミングが強制的にずらされます 7。
- 結論(Point): この一瞬の「ズレ」によってGKの体勢が崩れ、中途半端なセービング(ディフレクション)を誘発したり、股抜きシュートが成功しやすくなったりします 7。
ソサイチ(7人制サッカー)とディフレクションの密接な関係
最後に、近年人気が高まっている7人制サッカー(ソサイチ)とディフレクションの関係について解説します。
ソサイチは、一般的な11人制サッカーとは異なる点がいくつかあります。
- ピッチサイズ: 11人制(例:68m×105m)に対し、ソサイチは原則として「幅30m~40m × 長さ50m~60m」と、かなり狭く設定されています。
- ゴールサイズ: 11人制(2.44m×7.32m)に対し、ソサイチは「2.15m×5m」のジュニアサッカーゴールが使用されます。
- オフサイド: ルールとして存在しますが、大会のローカルルール(例:8のU-18大会)によっては採用されないケースもあります。
これらの特徴を踏まえると、ソサイチはディフレクションが非常に起こりやすい競技であると分析できます。ピッチが狭いということは、必然的にペナルティエリア付近での「密集」が11人制よりも多く発生します。選手間の距離が近いため、シュートを打つ側も、ブロックする側も、時間がありません。
つまり、ソサイチは、「シュートブロック」と「意図的なディフレクション」が試合の勝敗に占める割合が、11人制サッカーよりも格段に高い競技です。オフサイド・ルールの有無に関わらず、本記事で紹介した「守備の6原則」や「攻撃の股抜き・タイミングずらし」といったディフレクションを巡る攻防の技術は、ソサイチプレイヤーにとって必須のスキルであると断言できます。
まとめ:ディフレクションを制する者が、サッカーを制す
この記事では、「ディフレクション」という一つの現象を、ルールの側面、守備の側面、そして攻撃の側面から深く掘り下げてきました。
- 結論(Point): ディフレクションは、単なる「不運」や「幸運」で片付けられる現象ではありません。
- 理由(Reason): なぜなら、オフサイド・ルールにおいては「意図的なプレー」か「反射(ディフレクション)」かという厳密な定義が存在し、守備においては「6つの鉄則」によって防ぐべき技術であり、攻撃においては「意図的に」生み出すべき技術だからです。
- 具体例(Example): 2022年のIFABによるガイドラインの明確化は、この現象の重要性を世界的に再確認させるものでした。Jリーグの事例のように、攻撃側の「スルー」一つが守備側のプレーを「ディフレクション」に変えてしまうほど、奥深い世界がそこにはあります。
- 結論(Point): ディフレクションを深く理解し、その技術を磨くことは、試合の勝敗を左右する決定的な差を生み出します。ぜひ本記事で学んだ知識と技術を、次の試合観戦やご自身のプレーに活かしてください。
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