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サッカーのオーバーロードとは?数的優位で守備を崩す?アイソレーションとの関係は?

解説





 

  1. サッカーにおけるオーバーロードとは?戦術的定義とメカニズムを完全解説
    1. オーバーロードの言葉の意味とピッチ上で起きる現象
    2. なぜオーバーロードが必要なのか?現代サッカーの守備組織と数的優位の関係
  2. オーバーロードがもたらす3つの巨大な戦術的メリット
    1. 安定したボール保持とパスコースの創出による支配
    2. 守備ブロックを破壊する「アイソレーション」への展開スイッチ
    3. ボールロスト時の即時奪回(ネガティブトランジション)の効率化
  3. オーバーロードとアイソレーションの不可分な関係と相乗効果
    1. 片側に寄せることで逆サイドに広大なスペースを作る理論
    2. 質的優位(個の力)を最大化する1対1の作り方と実例
  4. ポジショナルプレーとオーバーロードの深い結びつき
    1. 5レーン理論とハーフスペースにおける数的優位の形成
    2. 「3-2-5」システムにおける攻撃的オーバーロードの構造
  5. 実戦におけるオーバーロードの具体的パターンと選手配置
    1. サイドでの数的優位(トライアングルとダイヤモンド)の形成
    2. 中央エリアへの密集と偽サイドバック(インバーテッドFB)の活用
    3. ゼロトップ(偽9番)の列落ちによる中盤オーバーロード
  6. 世界最高峰のチームに学ぶオーバーロード戦術の最新実例(2025-26)
    1. マンチェスター・シティ:ペップ・グアルディオラの「3-2-5」と中盤支配
    2. アーセナル:サカとウーデゴールによる右サイドの破壊的連携
    3. レバークーゼン:シャビ・アロンソのウイングバック活用と可変システム
  7. オーバーロードを習得するためのトレーニングメニューと指導法
    1. 基礎:ロンド(鳥かご)による数的優位の認知と判断スピード向上
    2. 応用:8対6のスモールサイドゲーム(35m×35m)でのスイッチ意識
    3. 実践:3対2+サーバーを用いたサイド攻略と判断のドリル
  8. まとめ:オーバーロードを理解してサッカーの「数的優位」を制する
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サッカーにおけるオーバーロードとは?戦術的定義とメカニズムを完全解説

現代サッカーの試合を見ていると、ピッチの片側に選手が異常に密集しているシーンを目にすることが多くなりました。これは選手が勝手に集まっているのではなく、「オーバーロード」と呼ばれる高度な戦術的意図に基づいた現象です。この章では、オーバーロードの定義から、その背景にある理論的メカニズムまでを、初心者の方にも分かりやすく、かつ専門的な深みを持って解説していきます。

オーバーロードの言葉の意味とピッチ上で起きる現象

オーバーロードという言葉は、英語の「Overload」に由来しており、直訳すると「過負荷」や「詰め込みすぎ」といった意味を持ちます。サッカーの戦術用語としては、「ピッチ上の特定のエリア(ゾーン)に、意図的に味方選手を過剰に配置し、局所的な数的優位(Numerical Superiority)を作り出すこと」と定義されます。

通常、サッカーは11対11で行われるスポーツであり、単純計算では1対1の均衡状態が基本となります。しかし、ピッチ全体に選手が均等に散らばっていては、組織的な守備を崩すことは困難です。そこで攻撃側のチームは、意識的にボールがあるサイドや中央の特定の狭いエリアに3人、4人、時には5人と選手を集めます。

これにより、その特定の区画において、守備側の人数を上回る状況(例:2人のDFに対して3人の攻撃側、3人のDFに対して4人の攻撃側)を人工的に作り出します。これがオーバーロード状態です。この状況下では、以下のような具体的な現象がピッチ上で発生します。

  • ボール周辺の人口密度の急上昇: ボールを持っている選手(ボールホルダー)の周囲に、パスを受けられる味方選手が常に複数人存在する状態になります。
  • 守備側の判断エラーの誘発: 守備側の選手は、「自分のゾーンを守るべきか」「目の前の相手をマークすべきか」「増えた相手に対応するためにポジションを捨てるべきか」という複雑な判断を瞬時に迫られます。この認知負荷(Cognitive Load)の高まりが、マークのズレや対応の遅れを生みます。
  • 守備重心の強制的な移動: 危険なエリアに人数をかけられると、守備側は失点を防ぐために他のエリアから人を集めて対応せざるを得ません。結果として、ピッチの片側に両チームの選手が密集し、逆サイドには広大な無人のスペースが生まれます。

なぜオーバーロードが必要なのか?現代サッカーの守備組織と数的優位の関係

かつてのサッカーでは、個人のドリブル突破や「ファンタジスタ」と呼ばれる特別な選手の閃きが攻撃の主役でした。しかし、現代サッカーでは守備戦術が飛躍的に進化し、高度に組織化されています。特に、アリーゴ・サッキ以降発展し、現在では標準装備となった「ゾーンディフェンス」や「コンパクトな守備ブロック」の前では、単独での突破は極めて困難になりました。

どれほど優れたドリブラーであっても、組織された2人、3人の守備者に囲まれればボールを失います。そこで重要になるのが、組織的な守備を「数」と「配置」の論理で崩すオーバーロードです。

守備戦術の特徴 オーバーロードによる対抗策
ゾーンディフェンス
選手間の距離を一定に保ち、網のようにスペースを埋めて守る。
局所的破壊
特定のゾーンに守備側の想定を超える人数(過負荷)を送り込み、担当者の処理能力をパンクさせる。1人のDFに2人の攻撃者を当てることで、ゾーンの網を食い破る。
激しいプレッシング
ボールホルダーに対して時間とスペースを与えないよう圧力をかける。
パスコースの確保
常にフリーな味方(浮いた選手)を作ることで、プレスに来た相手をパスで無力化(回避)し、スタミナを消耗させる。

このように、オーバーロードは単なる「人海戦術」や「攻撃的姿勢」ではありません。数学的・幾何学的なアプローチを用いて、相手の守備システムに構造上のエラー(バグ)を起こさせるための、極めて論理的で計算された戦術なのです。現代のトップレベルの試合において、オーバーロードの概念なしに攻撃を構築することは不可能と言っても過言ではありません。

オーバーロードがもたらす3つの巨大な戦術的メリット

ピッチの特定エリアに人数をかけるということは、他のエリアが手薄になるというリスクも伴います。しかし、世界中の監督たちがこぞってこの戦術を採用するのは、それを補って余りある戦術的なメリットが存在するからです。ここでは、オーバーロードが攻撃側にもたらす3つの主要な利点について、具体的なプレー局面を交えて深く掘り下げていきます。

安定したボール保持とパスコースの創出による支配

最大のメリットは、ボールポゼッション(保持)の安定化です。局所的に数的優位(例えば3対2や4対3)ができている状況では、理論上、必ず「フリーな選手(浮いた選手)」が1人以上存在することになります。

この「フリーマン」の存在が、ボール回しにおいて絶大な効果を発揮します。
密集エリアでは、選手同士の距離が近くなるため(10m〜15m程度)、パスの移動時間が短縮されます。これにより、守備側が寄せてくるスピードよりも速くボールを動かすことが可能になります。

具体的には、選手同士が近い距離で「トライアングル(三角形)」や「ダイヤモンド(菱形)」を形成しやすくなります。ボールホルダーに対して常に左右、あるいは斜め前後にパスコースが提供されるため、選手はパスミスを恐れずにプレーできます。もし相手が激しくプレスをかけてきても、数的優位を活かしてワンタッチパスで回避し、相手を「いなす」ことができます。これを繰り返すことで、相手を守備に奔走させ、肉体的にも精神的にも消耗させることができるのです。

守備ブロックを破壊する「アイソレーション」への展開スイッチ

オーバーロードの真の目的は、密集地帯で永遠にパスを回すことではありません。実は、「逆サイドの広大なスペースを攻めるための準備(囮)」という側面が非常に重要です。

サッカーのフィールドにおいて、守備側がボールサイドに密集して対応してきた瞬間、逆サイドの守備は必然的に手薄になります。オーバーロードによって相手守備陣の視線とポジションを片側に「釘付け」にすることで、逆サイドに意図的な「アイソレーション(孤立化)」状態を作り出すことができます。

密集地帯で相手を引きつけ、守備ブロックが片側に偏った絶妙なタイミングで、素早いサイドチェンジ(展開)を行います。これは攻撃を一気に加速させる「スイッチ」の役割を果たします。守備側がスライドして対応する前にボールを逆サイドへ届けることができれば、そこには広大なスペースと、1対1(あるいはフリー)の状況が待っています。オーバーロードは、この決定的なチャンスを生み出すための「溜め」の動作とも言えます。

ボールロスト時の即時奪回(ネガティブトランジション)の効率化

攻撃のために選手を密集させることは、実は守備面、特にボールを奪われた直後の局面(ネガティブトランジション)においても最強の防御策となります。

ボールを失った瞬間を想像してみてください。オーバーロードを行っている場合、ボールを奪った相手選手の周囲には、すでに多くの味方選手が至近距離に存在しています。この配置的優位性を利用しない手はありません。

  • 即時プレスの発動(ゲーゲンプレス): ボールを奪われた瞬間に、近くにいる複数の選手で相手を囲い込み、プレッシャーをかけてボールを奪い返すことが容易になります。
  • 5秒ルールの実行: ペップ・グアルディオラ監督などが採用する「5秒ルール(ボールを失ってから5秒間は全力で奪いに行く)」は、オーバーロードによる密集があってこそ機能します。相手はボールを奪ってもパスコースがなく、苦し紛れのクリアをするか、再びボールを失う可能性が高まります。
  • カウンターの抑止: 相手のカウンター攻撃の起点を即座に潰すことで、高いディフェンスラインを維持したまま、波状攻撃を続けることが可能になります。これを「Rest Defence(残存守備)」の強化とも呼びます。

つまり、オーバーロードは「攻撃のための戦術」であると同時に、「リスク管理を含めた最強の守備準備」でもあるのです。

オーバーロードとアイソレーションの不可分な関係と相乗効果

「オーバーロード(密集)」を語る上で絶対に外せないのが、その対となる概念「アイソレーション(孤立)」です。この二つはコインの表裏のような関係であり、セットで運用することで初めて最大の効果を発揮します。

片側に寄せることで逆サイドに広大なスペースを作る理論

サッカーのフィールドの幅は約68メートルありますが、守備側が中央を固めてコンパクトな陣形を保っている場合、その攻略は容易ではありません。そこで攻撃側は、意図的にバランスを崩す行動に出ます。

例えば、左サイドに4人〜5人の選手を集めて細かくパスを回します。これを戦術的には「相手の守備ブロックを吸い寄せる」と表現します。守備側は数的不利を防ぎ、ボールを奪うために、右サイドや中央の選手も左サイド寄りにポジションをスライド(移動)させざるを得ません。

この時、攻撃側の右サイド(逆サイド)には何が起きているでしょうか。そこには、広大なオープンスペースと、守備者がわずか1人(あるいは0人)しかいないという状況が生まれます。これが「アイソレーション(隔離)」された状態です。

人間は動いているものや密集している場所に自然と目が向く習性があります。オーバーロードによって守備者の意識を片側に集中させることで、逆サイドへの警戒心を薄れさせる「心理的な死角」を作る効果もあります [2]。

質的優位(個の力)を最大化する1対1の作り方と実例

作り出したアイソレーションのスペースを誰が使うのか。ここに、チームで最も「個の力(突破力)」がある選手を配置するのが現代サッカーの定石です。

ここで重要になるのが「質的優位(Qualitative Superiority)」という概念です。これは、戦術的な配置(数)ではなく、選手個人の能力(質)における優位性を指します。

  1. 舞台設定: オーバーロードで相手守備陣を片側に引きつけます。
  2. スイッチ: 鋭いサイドチェンジのパス(ロングボールや中継を経た高速パス)を、逆サイドのウイングへ送ります。
  3. 決闘の開始: ボールを受けたウイングは、広大なスペースと時間を得た状態で、相手サイドバックと正対します。守備側のカバーリング(援護)は間に合いません。
  4. 突破: 足の速いウイングやドリブルの名手が、孤立したDFに対して1対1を仕掛けます。

具体的な実例としては、マンチェスター・シティにおけるジェレミー・ドクや、かつてのバイエルン・ミュンヘンにおけるアリエン・ロッベンやフランク・リベリーがこの役割の象徴です。彼らはチーム全体が作ったオーバーロードの恩恵(広大なスペース)を受けて、1対1の勝負を制し、ゴールやアシストを量産しました [4, 5]。

「左で寄せて(オーバーロード)、右で刺す(アイソレーション)」。この一連の流れこそが、強固な守備ブロックを崩壊させるための黄金の崩しパターンなのです。

ポジショナルプレーとオーバーロードの深い結びつき

オーバーロードは単発のアイデアではなく、「ポジショナルプレー(Positional Play)」というより大きな戦術概念の一部として機能しています。ここでは、ピッチを分割する理論と絡めて解説します。

5レーン理論とハーフスペースにおける数的優位の形成

現代サッカーでは、ピッチを縦に5つのレーンに分割して考える「5レーン理論」が一般的です。

  • サイドレーン(大外): 左右のタッチライン際。
  • ハーフスペース(中間): サイドと中央の間にあるレーン。ゴールに向かう斜めの角度が確保できる最も危険なエリア。
  • センターレーン(中央): ゴール正面のレーン。

オーバーロードを形成する際、特に重要視されるのが「ハーフスペース」です。このレーンに選手(インサイドハーフや偽サイドバック)が侵入し、サイドレーンのウイング、センターレーンのFWと連携することで、守備側が最も対応しにくい「斜めの位置関係」での数的優位を作り出します。

「3-2-5」システムにおける攻撃的オーバーロードの構造

多くのトップチームがボール保持時に採用するのが「3-2-5(あるいは2-3-5)」という配置です [6, 7]。

  • 前線5枚(Five Lanes): 相手の最終ライン(通常4バック)に対して、5人の選手を前線に配置します。これにより、相手DFラインに対して常に「5対4」の数的優位(オーバーロード)を突きつけます。
  • 守備のジレンマ: 相手の4バックは、5人の攻撃者をマークしきれません。必ず誰か1人がフリーになるか、マークの受け渡しで混乱が生じます。
  • 中盤の構成: 後方の「3-2」の形は、相手のカウンターに備える「Rest Defence」としても機能しながら、前線の5人へ質の高いボールを供給する役割を担います。

この「3-2-5」システムは、ピッチの横幅を最大活用しながら、前線で常にオーバーロードを狙うための、現代サッカーにおける最も効率的な攻撃陣形の一つと言えるでしょう。

実戦におけるオーバーロードの具体的パターンと選手配置

では、具体的にどのように選手を配置してオーバーロードを作るのでしょうか。監督やチームのシステムによって方法は様々ですが、代表的な3つのパターンを紹介します。

サイドでの数的優位(トライアングルとダイヤモンド)の形成

最も基本的かつ頻繁に見られるのが、タッチライン際(サイド)でのオーバーロードです。

  • 構成メンバー: サイドバック(SB)、ウイング(WG)、そしてインサイドハーフ(IH)の3人が基本ユニットとなります。ここにボランチやセンターバックが加わることもあります。
  • 形状: 3人がそれぞれの距離感を保ちながら「トライアングル(三角形)」を形成します。さらに一人が加われば「ダイヤモンド(菱形)」になります。
  • 狙い: サイドの狭いエリアでパス交換を行い、相手のサイドバックやサイドハーフを釣り出します。相手が食いついてきた裏のスペースへ走ったり、ワンツーパスで突破を図ります。

アーセナルの右サイド(サカ、ウーデゴール、ホワイト)の連携は、この世界最高峰の例と言えます [8]。彼らは旋回するようにポジションを入れ替え、常に相手DFに対して判断の迷いを与え続けます。

中央エリアへの密集と偽サイドバック(インバーテッドFB)の活用

近年主流となっているのが、ピッチ中央におけるオーバーロードです。これを実現するための鍵となるのが「偽サイドバック(Inverted Fullback)」です。

  • 偽サイドバックの動き: 通常、サイドに開いているはずのサイドバックが、ボール保持時に中央(ボランチの位置)に入ってきます。
  • 中盤の数的優位: サイドバックが中盤に加わることで、中盤の人数が増えます(例:相手の中盤3人に対して、こちらは4人)。これにより、中央でのパス回しが圧倒的に有利になります [1, 9]。
  • 相手の迷い: 相手のサイドハーフは、中に入っていくサイドバックについていくべきか、サイドに残るべきか迷います。この判断の遅れが、フリーな選手を生み出す要因となります。

ゼロトップ(偽9番)の列落ちによる中盤オーバーロード

フォワード(FW)の選手が中盤に降りてくる「ゼロトップ(偽9番 / False 9)」も、オーバーロードを作る有効な手段です。

  • FWの列落ち: 最前線の選手が中盤のスペースに降りてくることで、中盤の人数が一時的にプラス1になります。
  • CBのジレンマ: 相手のセンターバック(CB)は、FWについて中盤まで出ていくか、ラインを保って待つかの選択を迫られます。ついていけば背後にスペースができ、待てば中盤で数的不利(オーバーロード)が完成し、FWがフリーで前を向けます [1]。

かつてバルセロナでリオネル・メッシがこの役割を完璧に遂行しました。中盤で数的優位を作り、ボールを支配してから、空いた裏のスペースへ飛び込むスタイルは、オーバーロード戦術の芸術的な完成形でした。

世界最高峰のチームに学ぶオーバーロード戦術の最新実例(2025-26)

理論を理解したところで、実際に世界のトップクラブがどのようにオーバーロードを実践しているかを見てみましょう。最新(2025-26シーズン想定)の戦術トレンドを踏まえて解説します。

マンチェスター・シティ:ペップ・グアルディオラの「3-2-5」と中盤支配

現代戦術の最先端を行くマンチェスター・シティは、オーバーロードの教科書のようなチームです。ペップ・グアルディオラ監督は、毎年のように細部をアップデートしていますが、その根幹にあるのは常に「数的優位」です [9]。

  • 3-2-5の攻撃陣形とボックス中盤: ボール保持時、DFラインからのビルドアップにおいて、ロドリなどのアンカーと、サイドから中に入った選手(リコ・ルイスやジョン・ストーンズなど)が並びます。さらにその前にインサイドハーフ(フォーデンやベルナルド・シウバ)が位置することで、中盤に「ボックス型(四角形)」の配置を作ります。これにより、相手の中盤3枚に対して「4対3」のオーバーロードを常に作り出し、中央を完全に支配します [4]。
  • ハーランドへの供給とドクの孤立: 中盤でのオーバーロードで相手を中央に密集(収縮)させた後、一気に裏のスペースへパスを送り、怪物ハーランドの決定力を活かす。あるいは、サイドで意図的に孤立させたドクやサヴィーニョのドリブル突破を活用するなど、オーバーロードを「崩しの起点」として完璧に使いこなしています。

アーセナル:サカとウーデゴールによる右サイドの破壊的連携

ミケル・アルテタ監督率いるアーセナルは、特定のエリアにおける「ユニットの連携」によるオーバーロードが特徴的です。特に右サイドの攻撃は、プレミアリーグでも屈指の破壊力を誇ります。

  • 右サイドの黄金トライアングル: 右ウイングのブカヨ・サカ、トップ下のマルティン・ウーデゴール、そして右サイドバック(ベン・ホワイトやユリエン・ティンバー)の3人が形成するトライアングルは極めて強力です [8, 10]。
  • 旋回とポジションチェンジ: サカが幅を取り、ウーデゴールがハーフスペースに潜り込み、サイドバックがその内側や外側を駆け上がる。この3人が流動的にポジションを入れ替えながら、常に局所的な数的優位(3対2など)を作り出し、相手守備陣を混乱に陥れます。
  • 狙い所: 相手のサイドバックを2人以上で囲い込んで無力化し、サカにカットインのシュートコースを作らせるか、ウーデゴールがフリーでラストパスを出せる状況を意図的に作り出しています [11]。

レバークーゼン:シャビ・アロンソのウイングバック活用と可変システム

ドイツ王者レバークーゼンを率いるシャビ・アロンソ監督も、オーバーロードの使い手として世界中から注目されています。彼の戦術は「3-4-2-1」をベースにした可変システムが特徴です。

  • 片側への極端な密集(Overloading the Ball Side): シャビ・アロンソの戦術では、ボールサイドに選手が極端に近い距離で集まる傾向があります。ショートパスを連続させ、相手全体を片側に引き寄せます [12]。
  • ウイングバックの攻撃参加と5トップ化: 特筆すべきはウイングバック(フリンポンやグリマルド)の攻撃力です。彼らが大外の高い位置を取ることで、前線が実質的な「5トップ」のような形になります。これにより、相手の4バックに対して「5対4」のオーバーロードを強制的に作り出します [13]。
  • ハーフスペースの攻略: ヴィルツなどのテクニカルな選手がライン間でボールを受け、そこへウイングバックが絡むことで、相手の守備ブロックの隙間(ポケット)を徹底的に突きます。中央とサイドの連動によるオーバーロードが、彼らの爆発的な攻撃力の源泉です。

オーバーロードを習得するためのトレーニングメニューと指導法

オーバーロードはプロだけの高度な戦術ではありません。少年サッカーから社会人チームまで、適切なトレーニングを行えば導入可能です。ここでは、オーバーロードの感覚を養うための具体的な練習メニューと、指導者が意識すべきコーチングポイントを紹介します。

基礎:ロンド(鳥かご)による数的優位の認知と判断スピード向上

まずは、数的優位の状況でボールを回す感覚を掴む「ロンド(Rondo)」が基本中の基本です。

  • 設定: 4対2、5対3などの四角形グリッド(8m〜10m四方)内でのボール回し。
  • 目的: 常に「フリーマン(余っている選手)」を見つける認知能力を養う。
  • 指導のポイント:
    • 「パスを出したら動く」だけでなく、「二人の守備者の間(ゲート)に顔を出す(顔出し)」ことを意識させます。
    • 「守備者を引きつけてからパスを出す」技術を習得させます。これにより、次の受け手がよりフリーになります [15]。

応用:8対6のスモールサイドゲーム(35m×35m)でのスイッチ意識

より実戦に近い形として、FIFAのトレーニングセンターでも推奨されている「8対6」のゲーム形式があります。これはオーバーロードとアイソレーションの切り替えを学ぶのに最適です。

項目 詳細設定
ピッチサイズ 35m × 35m(正方形)
ゴール 両端にミニゴールを2つずつ設置(計4つ)。幅を使う意識を持たせるため、ゴール間は15mほど離す。
人数配分 攻撃側8人 vs 守備側6人。常に攻撃側が+2名のオーバーロード状態。
ルール 攻撃側はどちらかのゴールを目指す。守備側がボールを奪ったら、即座に攻守交代(トランジション)して逆のゴールを目指す。ボールが出たらサイドの予備ボールから即再開。

トレーニングの狙い:
攻撃側は「どちらのサイドが空いているか」を常に見極める必要があります。片側のゴール前に守備が集まったら、無理に突破せず、素早く逆サイドのゴールへ展開(スイッチ)する判断力を養います。また、ボールを失った瞬間の「即時奪回(ゲーゲンプレス)」の練習にもなります。

実践:3対2+サーバーを用いたサイド攻略と判断のドリル

サイドでの崩しに特化したトレーニングです。

  • 設定: ピッチのサイドエリア(縦30m×横20m程度)を使用。攻撃3人 vs 守備2人。これに加えて、エリア外の後方にフリーマン(サーバー)を1人置きます。
  • 進め方: サーバーからパスを受けてスタート。攻撃側は3対2の数的優位を活かして、ドリブル突破やワンツーでライン突破(あるいはミニゴールへのシュート)を目指します。
  • コーチングポイント:
    • オーバーラップとインナーラップの使い分け: ボールホルダーの外を回るのか、内側を走るのか。守備者2人に「どっちをマークすればいいんだ?」という迷いを与えられているかを確認します。
    • リリースのタイミング: 守備者が自分に食いついてきた(寄せに来た)瞬間にパスを出す「食いつかせ」の技術を指導します。これが早いと守備はスライドでき、遅いと潰されます。

まとめ:オーバーロードを理解してサッカーの「数的優位」を制する

ここまで解説してきたように、オーバーロードとは、単に人を集めるだけでなく、「意図的に数的優位を作り、相手の守備システムを論理的に破壊する」ための高度な戦術です。

  • ボール保持の安定: 密集エリアで確実にパスを繋ぎ、ゲームを支配する。
  • アイソレーションの創出: 守備を集めて、逆サイドの「個の力」を爆発させるお膳立てをする。
  • 即時奪回の準備: ボールを失ってもすぐに囲い込んで奪い返し、波状攻撃を継続する。

この3つのメリットを理解することで、プレーヤーとしては「今、自分がサポートに行くべきか、あえて離れてスペースを作るべきか」の判断基準が明確になります。また、観戦者としても「なぜそこに選手が集まっているのか?」「次の瞬間にどこへ展開しようとしているのか?」という視点を持つことで、マンチェスター・シティやアーセナルのような美しいパスワークの裏にあるメカニズムが見え、サッカー観戦の深みと面白さが格段に増すはずです。

ぜひ、明日の練習や週末の試合観戦から、ピッチ上の「数」の偏りと、その裏にある意図に注目してみてください。

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