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デスマルケの極意|試合を決める「マークを外す動き」の神髄

解説





 

  1. 1. サッカーの勝敗を分ける動き「デスマルケ」とは?【基本の完全理解】
    1. 1-1. デスマルケの定義:マークを外し、優位な状況でボールを受ける動き
    2. 1-2. 「サポート」との決定的な違い:目的は”自分”か”味方”か
    3. 1-3. デスマルケはいつ、どこで使われるのか?
  2. 2. なぜ現代サッカーでデスマルケが「最強の武器」と言われるのか?
    1. 2-1. 組織化された守備を無力化する個の力
    2. 2-2. 局面別で見るデスマルケの重要性
  3. 3. デスマルケの2大分類:状況に応じて使い分ける「ルプトゥーラ」と「アポージョ」
    1. 3-1. Desmarque ruptura(デスマルケ・ルプトゥーラ):相手の背後を突く動き
    2. 3-2. Desmarque apoyo(デスマルケ・アポージョ):ボールホルダーに寄る動き
    3. 3-3. 比較表で一目瞭然!「ルプトゥーラ」と「アポージョ」の使い分け
  4. 4. デスマルケ成功の鍵を握る3つの目的意識
    1. 4-1. 目的①「ボールを保持するため」のデスマルケ
    2. 4-2. 目的②「チームを前進させるため」のデスマルケ
    3. 4-3. 目的③「ゴールを奪うため」のデスマルケ
  5. 5. プロは実践している!デスマルケの質を劇的に高める10のテクニック
  6. 6. デスマルケのタイミング学:「よーいドン」と「フライング」を使いこなす
    1. 6-1. 基本のタイミング:「よーいドン」
    2. 6-2. 上級者のタイミング:「フライング」
    3. 6-3. 「後出しじゃんけん」を制す者がデスマルケを制す
  7. 7. デスマルケの達人たちから学ぶ動きの極意【選手別・動画分析レベルの解説】
    1. 7-1. アーリング・ハーランド:純粋な「ルプトゥーラ」の破壊力
    2. 7-2. ケヴィン・デ・ブライネ:スペースを「予測」し「創造」するデスマルケ
    3. 7-3. アンドレス・イニエスタ:密集地帯を無力化する「マイクロ」デスマルケ
    4. 7-4. セルヒオ・ブスケツ:「動かない」ことで試合を支配する究極の「アポージョ」
  8. 8. 明日から実践できる!デスマルケを上達させるための段階的練習メニュー
    1. 8-1. Step 1: 認知能力を鍛える(頭のトレーニング)
    2. 8-2. Step 2: 個の技術を磨く(基礎トレーニング)
    3. 8-3. Step 3: 状況判断を養う(対人・グループトレーニング)
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1. サッカーの勝敗を分ける動き「デスマルケ」とは?【基本の完全理解】

サッカーの試合を観ていると、なぜあの選手はいつもフリーでボールを受けられるのだろう、と不思議に思った経験はありませんか。その秘密こそが「デスマルケ」です。この動きを理解すると、サッカー観戦が何倍も面白くなり、プレーの質も劇的に向上します。まずは、デスマルケがどのような動きなのか、その基本を徹底的に解説いたします。

1-1. デスマルケの定義:マークを外し、優位な状況でボールを受ける動き

デスマルケとは、スペイン語の”desmarque”(マークを外す動き)を語源とするサッカー用語です。具体的には、攻撃側の選手がボールを持っていない時(オフザボール)に、自分をマークしている相手ディフェンダーから巧みに離れ、パスを受けるためのスペースと時間を作り出す個人戦術を指します。

重要なのは、ただ闇雲に空いているスペースへ走るのではなく、「優位な状況でボールを受ける」という明確な目的がある点です。相手の逆を取り、前を向いた状態でパスを受けられれば、次のプレー(ドリブル、パス、シュート)へスムーズに移行できます。つまり、デスマルケはボールを受ける前の準備段階で行われる、相手との駆け引きそのものなのです。この一瞬の駆け引きに勝利することが、チャンスを生み出すための第一歩となります。

1-2. 「サポート」との決定的な違い:目的は”自分”か”味方”か

デスマルケと似た言葉に「サポート」があります。どちらもボールホルダーを助ける動きですが、その目的意識に決定的な違いが存在します。

  • サポート: ボールを持っている味方を助けるための、より広範な動きを指します。パスコースを作ったり、相手を引きつけたりと、チーム全体の潤滑油となる役割を担います。
  • デスマルケ: 「自分自身がボールを受けるため」に、マークを外す具体的なアクションを指します。

もちろん、優れたデスマルケは結果的にチームを助ける最高のサポートになります。しかし、その根本的な動機が「自分が起点になる」という点にあるのが特徴です。この違いを理解すると、選手の動きに隠された意図をより深く読み解けるようになります。すべてのデスマルケはサポートの一環ですが、すべてのサポートがデスマルケに該当するわけではないのです。

1-3. デスマルケはいつ、どこで使われるのか?

デスマルケは、ストライカーがゴール前で使う特別な動きだと思われがちですが、それは大きな誤解です。実際には、ピッチ上のあらゆる場所、そして試合のあらゆる局面で必要不可欠な動きです 1

  • ビルドアップ: ディフェンダーがゴールキーパーからのパスを受けるために、相手フォワードのプレスを外す動き。
  • 中盤での前進: ミッドフィルダーが相手の中盤ラインの隙間でパスを受け、攻撃を前進させる動き。
  • チャンスメイク: ウイングやトップ下の選手が、ディフェンスラインの背後やライン間でパスを引き出し、決定機を演出する動き。
  • フィニッシュ: ストライカーがペナルティエリア内で一瞬の駆け引きに勝ち、シュートチャンスを作り出す動き。

このように、デスマルケはポジションや状況を問わず、すべての選手が身につけるべき普遍的なスキルなのです。

2. なぜ現代サッカーでデスマルケが「最強の武器」と言われるのか?

現代サッカーは、戦術がかつてないほど高度化し、選手一人ひとりに求められるプレーの質も格段に上がりました。その中で、なぜ「デスマルケ」というオフザボールの動きが、これほどまでに重要視されるのでしょうか。その理由は、現代サッカーの守備戦術の進化と密接に関係しています。

2-1. 組織化された守備を無力化する個の力

現代サッカーの守備は、チーム全体が連動する非常に組織的なものへと進化しました。コンパクトな3ラインを形成し、選手間の距離を狭めることで、ボールホルダーから時間とスペースを奪い去ります。選手個人のフィジカル能力も向上し、90分間ハードワークを続けるのが当たり前になりました。

このような状況では、ドリブルやパスといったボールを持った状態でのプレーだけで局面を打開するのは極めて困難です。そこで重要になるのが、ボールを受ける前の駆け引き、すなわちデスマルケです。相手の守備組織が整う前に、個人の動き出し一つでマークを外し、意図的にズレを作り出す選手は、どんな堅牢な守備網をも破壊する鍵となります。試合の勝敗は、ボールが動く前に、すでに決まっているのです。

2-2. 局面別で見るデスマルケの重要性

デスマルケの価値は、試合の様々な局面で発揮されます。ゴールに直結する動きだけでなく、チームの攻撃を円滑に進めるためにも不可欠です。

  • ビルドアップ局面:自陣深くから攻撃を組み立てる際、相手の激しいプレッシングを回避するためにデスマルケは極めて重要です。パスの受け手が一瞬の動きでフリーになるだけで、チームはプレッシャーを回避し、安定してボールを前進させられます。ゴールから遠い位置での地味な動きに見えますが、これがなければ攻撃は始まりません。
  • チャンスメイク局面:相手陣内に攻め込んだ局面では、守備ブロックをいかに崩すかが課題となります。デスマルケによってディフェンスラインの背後を突いたり、ライン間でパスを受けたりすることで、決定的なチャンスが生まれます。VARの導入によりオフサイドが厳格に判定される現代では、動き出すタイミングの質がこれまで以上に問われます。
  • フィニッシュ局面:ゴール前の密集地帯では、スペースはほとんどありません。世界トップクラスのストライカーたちは、卓越したシュート技術だけでなく、相手ディフェンダーのマークを一瞬で外すデスマルケの技術に長けています。アーリング・ハーランド選手やロベルト・レヴァンドフスキ選手のように、クロスボールが上がる瞬間にDFの視野から消え、ゴール前に飛び込む動きは、まさに芸術の域に達しています。

かつてはドリブルのような華やかなオンザボールの技術が攻撃の主役でした。しかし、守備戦術が進化し、ボールホルダーへの圧力が強まった結果、状況は逆転しました。今や、デスマルケというオフザボールの技術こそが、オンザボールの技術を輝かせるための「前提条件」となったのです。優れたパサーも、パスを受けるための優れた動きがなければ、その能力を活かせません。デスマルケは、現代サッカーにおける攻撃の生命線と言えるでしょう。

3. デスマルケの2大分類:状況に応じて使い分ける「ルプトゥーラ」と「アポージョ」

デスマルケは、その目的や方向性によって、大きく2つの種類に分類されます。それが「デスマルケ・ルプトゥーラ」と「デスマルケ・アポージョ」です。この2つを理解し、状況に応じて的確に使い分けることが、質の高いプレーヤーになるための第一歩です。

3-1. Desmarque ruptura(デスマルケ・ルプトゥーラ):相手の背後を突く動き

「Ruptura」とは、スペイン語で「破壊」や「突破」を意味します。その名の通り、相手の最終ディフェンスラインを破壊し、その背後にある広大なスペースへ走り込む動きを指します。一般的に「裏への抜け出し」と呼ばれる動きがこれに該当します。

この動きの最大の目的は、ゴールに直結するチャンスを作り出すことです。成功すれば、一気にゴールキーパーと1対1の状況を迎えられます。スピードと、パスの出し手との完璧なタイミング、そしてオフサイドにかからない駆け引きの巧みさが求められる、非常にダイナミックなデスマルケです。

3-2. Desmarque apoyo(デスマルケ・アポージョ):ボールホルダーに寄る動き

「Apoyo」とは、スペイン語で「サポート」や「支え」を意味します。こちらはルプトゥーラとは対照的に、ボールホルダーに対して「寄っていく」動きです。マークについている相手から離れながら、パスを受けやすい位置に移動し、味方を助けます。「足元で受ける」「落ちて受ける」といった動きが代表例です。

この動きの主な目的は、ボールを安全に保持すること、攻撃のリズムを変えること、あるいは相手ディフェンダーを意図的におびき寄せてスペースを作り出すことです。味方がプレッシャーを受けている際に、安全なパスコースを提供することで、チームの危機を救う重要な役割を果たします。

3-3. 比較表で一目瞭然!「ルプトゥーラ」と「アポージョ」の使い分け

この2種類のデスマルケは、目的も動き方も全く異なります。以下の表で、その違いを明確に比較してみましょう。

項目 Desmarque ruptura (ルプトゥーラ) Desmarque apoyo (アポージョ)
目的 ゴールを奪う、相手守備ラインを突破する ボールを保持する、攻撃を組み立て直す、味方を助ける
主な方向 相手ゴール方向へ(ボールから遠ざかる) ボールホルダー方向へ(ボールに近づく)
主な状況 相手DFラインが高い時、味方が前を向いてパスを出せる時 味方がプレッシャーを受けている時、攻撃のテンポを変えたい時
求められる能力 スピード、タイミング、オフサイドラインとの駆け引き 予測、ポジショニング、ボールキープ力、状況判断力
名手とされる選手 アーリング・ハーランド、ティモ・ヴェルナー セルヒオ・ブスケツ、アンドレス・イニエスタ

このように、どちらか一方が優れているというわけではなく、試合の状況や戦術的な意図に応じて、両者を的確に使い分ける判断力がトッププレーヤーには求められるのです。

4. デスマルケ成功の鍵を握る3つの目的意識

デスマルケの種類を理解した上で、次に重要になるのが「なぜ動くのか?」という目的意識です。ボールホルダーの状況を瞬時に把握し、チームにとって今何が最善かを判断することで、動きの質は飛躍的に高まります。デスマルケの目的は、大きく3つに分類できます。

4-1. 目的①「ボールを保持するため」のデスマルケ

ボールを持っている味方が相手から激しいプレッシャーを受け、ボールを失いそうな状況。この時に最優先されるべき目的は、チームとしてボールの支配を維持することです。このような場面では、必然的に「デスマルケ・アポージョ」が選択されます。

パスの受け手は、ボールホルダーにとって「逃げ道」となるべく、安全で確実なパスコースを作り出さなければなりません。具体的には、ボールホルダーに近づき、相手のいない角度からパスを受けられる位置を取ります。この動きの究極の名手が、元バルセロナのセルヒオ・ブスケツ選手です。彼は常に味方が困った時のための最適な出口を用意し続け、チームの心臓として機能しました。

4-2. 目的②「チームを前進させるため」のデスマルケ

チームが安定してボールを保持し、相手陣内へ攻め込む段階では、攻撃を「前進させる」ためのデスマルケが必要になります。この目的を達成するためには、「デスマルケ・ルプトゥーラ」で相手ディフェンスラインの背後を狙う動きと、「デスマルケ・アポージョ」で相手の中盤とディフェンスのライン間にポジションを取る動きの両方が有効です。

重要なのは、パスを受けた際に前を向けるスペースを確保し、相手ゴール方向へプレーを続けられる状態でボールを受けることです。この動きによって、チームは一気にチャンスゾーンへと侵入できます。

4-3. 目的③「ゴールを奪うため」のデスマルケ

アタッキングサード(ピッチを3分割した際の相手ゴールに近いエリア)までボールを運んだら、最後の目的は「ゴールを奪う」ことです。この局面で最も効果的なのが、相手ディフェンスラインの裏へ抜け出す「デスマルケ・ルプトゥーラ」です。

爆発的な加速力、オフサイドにならないためのカーブを描く動き、そしてパスが出てくる瞬間と完璧に合わせるタイミング。これらすべてを高いレベルで実行することで、決定的なシュートチャンスが生まれます。

実は、この3つの目的は、ボールホルダーの状況と密接に連動しています。選手は「味方へのプレッシャー」を読み取ることで、自らの動きを決定できるのです。

  • 味方へのプレッシャーが強い → 目的は「保持」 → 選択は「アポージョ」
  • 味方へのプレッシャーが弱い → 目的は「前進」や「ゴール」 → 選択は「ルプトゥーラ」この思考プロセスを無意識レベルで実行できるかどうかが、一流選手とそうでない選手を分ける大きな要因となります。

5. プロは実践している!デスマルケの質を劇的に高める10のテクニック

デスマルケは、単に走るだけではありません。相手ディフェンダーを欺き、出し抜くための様々な技術が凝縮されています。ここでは、世界トップクラスの選手たちが実践している、デスマルケの質を劇的に高める10の具体的なテクニックをご紹介します。

  1. 予備動作(フェイント)を入れる動き出したい方向とは逆の方向に一度動いてから、本来の方向へスプリントします。この一瞬のフェイントで相手の重心をずらし、反応を遅らせることが可能です。
  2. 緩急をつける常に全力で走るのではなく、ゆっくりとした動きから急に加速したり、スプリントから急停止したりと、動きのペースを変化させます。このリズムの変化に、ディフェンダーはついていけません。
  3. 相手の視野から消える相手ディフェンダーの背中側、つまり死角にポジションを取ります。相手が見えない位置から動き出すことで、完璧にマークを外せます。
  4. DFラインとの駆け引き常にオフサイドラインのギリギリにポジションを取り、「裏へ抜け出すぞ」という脅威を与え続けます。これにより、ディフェンダーはラインを高く保てなくなり、チーム全体の攻撃スペースが広がります。
  5. カーブを描く動き直線的に走るのではなく、弧を描くように走ることで、オフサイドにかからずにトップスピードを維持したままパスを受けることが可能です。また、ゴールに対して良い角度で侵入できます。
  6. パスの出し手と目を合わせる動き出す直前に、パスの出し手と一瞬アイコンタクトを取ります。これにより、「今から動く」という意思が伝わり、パスが出てくるタイミングの精度が格段に向上します。
  7. 体の向きを作るパスを受ける前から、侵入したいスペースに体の中心(へそ)を向けておきます 1。これにより、ボールを受けた瞬間にスムーズに前を向き、次のプレーへ素早く移行できます。
  8. バックステップで距離を作るアンドレス・イニエスタ選手が得意とした技術で、相手が寄せてきた瞬間にバックステップを踏むことで、パスを受けるためのわずかなスペースと時間を生み出します 7。
  9. 守備の管轄の狭間を狙うセンターバックとサイドバックの間など、2人のディフェンダーの担当エリアの境界線(狭間)を狙って動きます。これにより、どちらがマークにつくべきか一瞬の迷いが生じ、フリーになりやすくなります。
  10. 味方をおとりに使う/おとりになる最も高度なデスマルケです。自分がパスを受けるためではなく、あえて自分が動くことで相手ディフェンダーを引きつけ、味方のためのスペースを作り出す動きです。

これらのテクニックを一つでも多く習得し、組み合わせることで、あなたのオフザボールの動きは格段に洗練されるでしょう。

6. デスマルケのタイミング学:「よーいドン」と「フライング」を使いこなす

デスマルケの成否を分ける最も重要な要素、それは「タイミング」です。どれだけ速く走れても、どれだけ巧みなフェイントを使えても、動き出すタイミングが0.1秒ずれるだけでパスはつながりません。ここでは、デスマルケのタイミングを2つの概念に分けて、その極意に迫ります。

6-1. 基本のタイミング:「よーいドン」

「よーいドン」とは、パスの出し手がボールを蹴る、まさにその瞬間に合わせて動き出すタイミングのことです 2。陸上競技のスタートのように、合図と同時に走り出すイメージです。

このタイミングは、出し手と受け手の意思疎通がしやすく、パスのズレが起こりにくいという利点があります。多くの選手が基本としているタイミングであり、確実性が高い方法です。しかし、相手ディフェンダーもパスの出し手の動きを見ているため、動きを予測されやすいという側面も持ち合わせています。

6-2. 上級者のタイミング:「フライング」

「フライング」とは、パスの出し手がまだボールを完全にコントロールする前、例えば、出し手にパスが向かっている最中に、すでに動き出すという非常に高度なタイミングです。

この動きは、相手ディフェンダーの意表を突くのに絶大な効果を発揮します。ディフェンダーはまだパスの出し手に意識が集中しており、受け手の動き出しへの準備ができていません。そのため、一瞬の油断を突いて大きなアドバンテージを得ることが可能です。ただし、パスの出し手がトラップミスをする可能性や、パスが出てこないリスクもあるため、高度な予測能力と信頼関係が求められます。

6-3. 「後出しじゃんけん」を制す者がデスマルケを制す

「フライング」の真髄は、単に早く動き出すことではありません。それは、相手ディフェンダーに対して「後出しじゃんけん」を仕掛ける権利を得ることにあります。

通常、受け手とディフェンダーの駆け引きは同時スタートの「じゃんけん」です。しかし、「フライング」で先に動き出すとどうなるでしょうか。パスがまだ出し手に渡っていない「デッドタイム」に受け手が動き出すことで、ディフェンダーは先に選択を迫られます。「受け手についていく」か、「ポジションを維持する」かの二択です。

受け手は、先に動いたことで生まれた時間的余裕を使い、ディフェンダーのその反応を見てから、自分の最終的な動きを決定できます。

  • もしディフェンダーがついてきたら、急に止まって足元で受ける(アポージョ)。
  • もしディフェンダーがポジションを維持したら、そのまま裏へ走り続ける(ルプトゥーラ)。

このように、相手の出した手を「見てから」自分の手を出すことができるのです。これは、単なるスピードの勝負ではなく、相手の思考の一歩先を行く、知的な駆け引きの勝利と言えます。この「後出しじゃんけん」の概念を理解し、実践できる選手こそが、真のデスマルケの達人なのです。

7. デスマルケの達人たちから学ぶ動きの極意【選手別・動画分析レベルの解説】

理論を学んだ後は、最高の「お手本」から学ぶのが上達への近道です。ここでは、デスマルケの様々な側面を体現する世界トップクラスの選手たちを分析し、その動きの極意を解き明かします。彼らのプレーに注目することで、これまで解説してきたテクニックがどのように実践されているか、具体的に理解できるはずです。

7-1. アーリング・ハーランド:純粋な「ルプトゥーラ」の破壊力

マンチェスター・シティに所属するノルウェー代表FW、アーリング・ハーランド選手は、「デスマルケ・ルプトゥーラ」のスペシャリストです。彼のプレーは、相手ディフェンスラインの背後を破壊するという一点に特化しています。

彼の動きの特徴は以下の通りです。

  • 爆発的な初速: 相手DFの視野から消える位置を取り、パスが出る瞬間に爆発的なスピードで背後へ飛び出します。
  • 駆け引きの巧みさ: 常にオフサイドライン上でDFと駆け引きを続け、一瞬の隙を見逃しません。
  • 直線的なパワー: 相手を背負っていてもものともしないフィジカルで、最短距離をゴールへ向かいます。純粋なスピードとパワーで相手をねじ伏せる彼の動きは、ルプトゥーラの最も分かりやすいお手本です。

7-2. ケヴィン・デ・ブライネ:スペースを「予測」し「創造」するデスマルケ

ハーランド選手のチームメイトであるケヴィン・デ・ブライネ選手は、全く異なるタイプのデスマルケの達人です。彼の真骨頂は、驚異的な戦術眼と予測能力にあります。

彼の動きの特徴は以下の通りです。

  • スペース認知・予測能力: 彼は単に空いているスペースへ走るのではなく、「これからスペースが空く場所」を予測して動き出します。
  • おとりの動き(デコイラン): 自分がパスを受けなくても、味方のためにスペースを作り出す動きを多用します。彼が動くことで相手DFが引きつけられ、そこにできたスペースを他の選手が使います。
  • 緩急の利用: 爆発的なスピードがなくとも、動きの緩急だけで相手を剥がし、決定的なパスコースを確保します。デ・ブライネ選手のプレーは、デスマルケが肉体的な能力だけでなく、知性によっても支配できることを証明しています。

7-3. アンドレス・イニエスタ:密集地帯を無力化する「マイクロ」デスマルケ

元スペイン代表のアンドレス・イニエスタ選手は、特に狭いスペースでのデスマルケにおいて、歴史上最高の選手の一人です。彼の動きは、数センチ単位の駆け引きで相手を無力化する「マイクロ・デスマルケ」と呼ぶべきものです。

彼の動きの特徴は以下の通りです。

  • バックステップとボディフェイント: 相手が寄せた瞬間に小さなバックステップで距離を作ったり、体の向きをわずかに変えるだけで相手の重心をずらしたりします。
  • ボールを餌にする: あえて相手にボールを晒すことで食いつかせ、その逆を取ってかわします。ボール自体をデスマルケの道具として利用するのです。彼のプレーは、派手なスプリントだけがデスマルケではないことを教えてくれます。密集地帯でこそ輝く、繊細な技術の結晶です。

7-4. セルヒオ・ブスケツ:「動かない」ことで試合を支配する究極の「アポージョ」

元スペイン代表のセルヒオ・ブスケツ選手は、「デスマルケ・アポージョ」の概念を再定義した選手です。彼のデスマルケは、時に「動かない」という選択によって成り立っています。

彼の動きの特徴は以下の通りです。

  • 最適なポジショニング: 彼はピッチ全体を俯瞰し、常にチームのバランスが取れる最適なポジションに立ち続けます。闇雲に動くのではなく、「正しい場所」にいることを最優先します。
  • 絶対的な逃げ道: どの味方がボールを持っても、必ずブスケツ選手へのパスコースが存在します。彼はチーム全体の「安全地帯」として機能し、ボール保持を安定させます。彼のプレーは、デスマルケが究極的には「思考」のスポーツであり、ピッチ上の幾何学を理解する能力が最も重要であることを示しています。

8. 明日から実践できる!デスマルケを上達させるための段階的練習メニュー

デスマルケの理論と理想形を学んだら、次はいよいよ実践です。ここでは、初心者からでも始められるように、3つのステップに分けた具体的な練習メニューを紹介します。これらのトレーニングを継続することで、あなたのオフザボールの質は確実に向上します。

8-1. Step 1: 認知能力を鍛える(頭のトレーニング)

優れたデスマルケは、まず「見る」ことから始まります。ピッチ上のどこにスペースがあり、敵と味方がどう動いているかを正確に把握する能力がなければ、正しい動きは選択できません。

  • 試合観戦の仕方を変える普段のサッカー観戦ではボールの行方を追いがちですが、意識的にボールを持っていない選手、特にデ・ブライネ選手のような名手の動きだけを15分間追い続けてみてください 13。彼らがいつ、どこへ、なぜ動いているのかを観察することで、動きのパターンが頭にインプットされます。
  • ビデオ分析自分の試合をビデオで撮影し、自分のオフザボールの動きを客観的に見直してみましょう。パスを要求すべきだった場面や、もっと良い動きができた場面が必ず見つかります。課題を明確にすることが、上達への第一歩です。

8-2. Step 2: 個の技術を磨く(基礎トレーニング)

次に、デスマルケに必要な基本的な体の動かし方を反復練習で体に染み込ませます。

  • フェイント&スプリントマーカーをいくつか設置します。一つのマーカーに向かってジョギングし、マーカーの手前で一度逆方向に体を傾けるフェイントを入れ、爆発的に本来の方向へスプリントします。予備動作の感覚を養うトレーニングです。
  • 緩急ランニング一定の距離を、「5秒スプリント→5秒ジョギング→5秒ストップ」のように、ペースを意図的に変化させながら走ります。これにより、試合中の様々なスピード変化に対応できる体を作ります。

8-3. Step 3: 状況判断を養う(対人・グループトレーニング)

最後に、実際の試合に近い状況で、認知能力と個の技術を統合させるトレーニングを行います。

  • 2対2+フリーマン狭いグリッドの中で2対2を行い、外にいるフリーマン(どちらのチームにもパスを出せる選手)とパス交換をします 5。人数が少ないため、常に動き続けてパスコースを作らなければならず、デスマルケの重要性を体感できます。
  • 3人組の連携シュート3人1組で行う練習です。1人目が2人目にパスを出し、その間に3人目の選手がデスマルケの動きでディフェンスの裏へ抜け出し、2人目からのパスを受けてシュートを打ちます。パスの出し手と受け手のタイミングを合わせる絶好のトレーニングになります。
  • 指導者向けのポイント指導者の方は、練習中にプレーを一度止める「フリーズコーチング」が有効です。動きが止まった状態で、「今、どこに動けばもっと良いパスが受けられたかな?」と選手に問いかけ、考えさせます。「味方がプレッシャーを受けているから、足元に寄ってあげよう!」のように、動きの理由を具体的に言語化して伝えることも重要です。

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