マルセイユルーレットの教科書｜ジダンに学ぶ歴史・やり方・名場面

観客を魅了する魔法の技「マルセイユルーレット」とは？

サッカーには、見る者の心を一瞬で掴んで離さない、魔法のようなテクニックが存在します。その中でも、特にエレガントで美しい技として知られているのが「マルセイユルーレット」です。これは単なるドリブル突破の技術ではありません。相手とボール、そして自分自身の体を巧みに操り、360度の華麗なターンで相手を無力化する、まさに芸術の域に達したスキルなのです。この技は、サッカーの歴史に名を刻む2人の天才、ジネディーヌ・ジダンとディエゴ・マラドーナによって、その輝きを世界中に知らしめられました。

ジダンとマラドーナが代名詞！名前の由来と華麗なる歴史

マルセイユルーレットは、ボールを保持した選手が相手ディフェンダーに正対した状態から、一瞬で体を反転させて抜き去るドリブルテクニックです。その流れるような動きは、まるでダンスを踊っているかのようであり、多くのサッカーファンを魅了してきました。この技を語る上で絶対に欠かせないのが、フランスの伝説ジネディーヌ・ジダンと、アルゼンチンの英雄ディエゴ・マラドーナの存在です。

実は、この技の呼び名は時代と共に変遷を遂げてきました。1980年代に世界を席巻したマラドーナがこの技を巧みに使っていたことから、当時は「マラドーナ・ターン」や「マラドーナ・スピン」として知られていました。しかし、1990年代後半から2000年代にかけて、ジダンがこの技を自身の代名詞として確立させます。彼がフランスの港町マルセイユの出身であること、そして彼自身がこの技を「ルーレット」と呼んだことから、「マルセイユルーレット」という名称が世界的に定着したのです。

この名前の変遷は、単なる呼称の変化以上の意味を持ちます。それは、サッカー界の主役が移り変わる中で、一つの技がいかにして新たなアイコンと結びつき、その伝説を更新していくかという物語を伝えているのです。マラドーナの爆発的なドリブルと、ジダンの優雅なボールコントロール。二人の天才が愛したこの技は、それぞれのプレースタイルを象徴する形で、サッカー史に深く刻み込まれています。

なぜ「マルセイユルーレット」と呼ばれる？複数の呼び名とその背景

マルセイユルーレットには、その歴史的背景からいくつかの呼び名が存在します。あなたが友人との会話や海外のサッカー中継で異なる名前を耳にしても混乱しないように、ここでその代表的な名称と由来を整理しておきましょう。

• マルセイユルーレット (Marseille Roulette)最も一般的に使われている名称です。フランスが生んだ「マエストロ（巨匠）」、ジネディーヌ・ジダンの出身地であるマルセイユにちなんで名付けられました。ジダンが試合でこの技を頻繁に、かつ効果的に使用したことで、この名前が広く浸透しました。
• ジダン・ターン (Zidane Turn)その名の通り、ジダンの名を冠した呼び名です。彼の代名詞的なプレーであったことから、敬意を込めてこのように呼ばれる場合があります。シンプルで分かりやすく、誰の技であるかが一目瞭然です。
• マラドーナ・ターン / マラドーナ・スピン (Maradona Turn / Maradona Spin)ジダン以前に、この技の名手として知られたディエゴ・マラドーナに由来する呼び名です。特にマラドーナの全盛期を知る世代のファンにとっては、今でもこちらの名称の方が馴染み深いかもしれません。

これらの名前はどれも間違いではありません。しかし、現代のサッカー界では「マルセイユルーレット」が最も広く認知されています。この技の歴史を知ることで、サッカー観戦がより一層深みを増すはずです。

【初心者必見】明日からできるマルセイユルーレットのやり方完全ガイド

「マルセイユルーレットなんて、プロの選手にしかできない難しい技だろう」と感じていませんか。確かに華麗な技ですが、実はその動きは3つのシンプルなステップに分解できます。一つひとつの動作を丁寧に練習すれば、あなたもこの美しい技を習得することが可能です。ここでは、初心者の方でも分かりやすいように、完全ガイドとしてその手順を解説します。

ステップ1：ボールを利き足の裏で引き込む【最初のタッチ】

マルセイユルーレットの成功は、この最初のタッチで決まると言っても過言ではありません。相手ディフェンダーが目の前にいる状況を想像してください。まず、ドリブルで相手に近づき、ボールを利き足の足裏（ソール）で優しく止めます。そして、そのままボールを自分の体の方へスッと引き込んでください。

この時のポイントは、ボールを強く引きすぎないことです。あくまでも自分のコントロール下にボールを置き続ける、柔らかく吸い付くようなタッチが理想です。この最初の動きが、相手ディフェンダーに「ボールを奪いにいけるかもしれない」と思わせるための重要な布石となります。この一瞬の駆け引きが、次の回転動作への完璧な序章となるのです。

ステップ2：相手に背を向けながら体を360度回転させる【軸の形成】

利き足でボールを引き込むのとほぼ同時に、体を回転させ始めます。ここでの重要なポイントは、相手から遠ざかる方向、つまり相手に背を向けるようにして回ることです。軸足となる方の足（ボールを引いた足とは逆の足）をしっかりと地面につけ、それをコンパスの針のように使い、体全体をスムーズに360度回転させます。

この時、体はボールを守る「壁」の役割を果たします。相手ディフェンダーからはボールが見えなくなり、どこにボールがあるのか、あなたがどちらに動くのかを完全に見失います。体を低く保ち、バランスを崩さないように意識することで、回転の安定性が格段に向上します。この体の使い方こそが、相手を幻惑する「ルーレット」の核となる部分です。

ステップ3：逆の足の裏でボールを押し出す【最後の仕上げ】

360度の回転が完了に近づくと、今度はボールを引いた足とは逆の足が、ボールの前に回り込んできます。体が前方を向く最後の瞬間に、その逆の足の裏を使って、ボールを前方のスペースへと押し出します ⁶。これで、あなたは相手ディフェンダーを完全に置き去りにし、自由なスペースへと抜け出すことができるのです。

ただし、ここで絶対に忘れてはならない注意点があります。それは、技を成功させた後、すぐにボールを自分のコントロール下に置くことです ⁷。せっかく相手を抜いても、ボールが体から離れすぎてしまっては、カバーに来た別のディフェンダーに簡単に奪われてしまいます。最後の押し出しは、力任せではなく、次のプレー（ドリブル、パス、シュート）にすぐ移れるような、絶妙な強さで行う必要があります。このフィニッシュの精度が、技の完成度を左右します。

成功率を劇的に上げる！マルセイユルーレットをマスターする3つの極意

マルセイユルーレットの基本的なやり方を理解したら、次はその成功率を飛躍的に高めるための「極意」を学びましょう。ただ形を真似るだけでは、試合で通用する武器にはなりません。トッププレーヤーたちは、技を繰り出す瞬間に何を考え、どのように状況を判断しているのでしょうか。ここでは、アマチュアとプロを分ける3つの重要なポイントを深く掘り下げて解説します。

極意1：9割を決める「スペースの確認」と「抜く方向」の判断力

マルセイユルーレットの成否は、実は技を始める前の「一瞬の判断」で9割が決まっています。多くの選手が失敗する原因は、技術的なミスではなく、この状況判断の誤りにあるのです。試合中、相手ディフェンダーが目の前に来た瞬間に頭が真っ白になってしまう経験はありませんか。そうならないために、極めてシンプルな判断基準を頭に叩き込んでください。

それは、「自分が抜けたい方向の足から技を始める」というルールです。例えば、相手の右側（自分から見て右側）にスペースがあり、そちらへ抜けたいのであれば、必ず右足でボールを引き込み、右回転で技を開始します。逆に左へ抜けたいなら、左足から始めるのです。この原則を徹底するだけで、プレッシャーのかかる場面でも迷いがなくなり、プレーの速度と精度が劇的に向上します。

さらに重要なのは、技を繰り出す前に「出口となるスペースがあるか」を必ず確認する習慣です。完璧なルーレットをしても、その先に別の相手選手がいては意味がありません。技を発動するコンマ数秒前に、首を振って周囲の状況を把握する。この「観て、判断する」プロセスこそが、単なるドリブラーから、試合を支配するプレーメーカーへと進化するための鍵なのです。

極意2：状況で使い分けるボールタッチ【ジダン流 vs リケルメ流】

マルセイユルーレットは、常に同じやり方で成功するわけではありません。状況に応じてフィニッシュのボールタッチを使い分けることで、その効果は最大化されます。ここでは、スペースの有無によって最適なタッチを使い分ける、2つのスタイルを紹介します。それは、広いスペースで輝く「ジダン流」と、密集地帯で真価を発揮する「リケルメ流」です。

ジダンのように前方に広大なスペースがある場合、最後のタッチは踵（ヒール）や足のアウトサイドを使います ⁶。これにより、ボールを大きく前方に蹴り出し、回転の勢いを殺さずに一気にトップスピードに乗ることができます。相手を置き去りにし、カウンターの起点となるようなダイナミックなプレーが可能になります。

一方、ファン・ロマン・リケルメのように、相手に囲まれた狭いエリアでプレーする場合、最後のタッチは足裏（ソール）で行うのが最適です。足裏でボールを押し出すことで、ボールが体から離れるのを最小限に抑え、絶対的なボールキープを優先します。爆発的な加速はできませんが、確実に相手のプレスを回避し、次のパスやシュートのための時間を生み出すことができます。

この2つのスタイルを状況に応じて瞬時に選択できるようになることが、真のマスターへの道です。以下の表を参考に、自分のプレーイメージを膨らませてみてください。

極意3：反復練習で技を体に刻み込む「長期記憶」トレーニング法

どんなに優れた理論やコツを学んでも、最終的にそれを試合で実行できなければ意味がありません。試合の激しいプレッシャーの中で、無意識に、そして完璧に技を繰り出すためには、反復練習によってその動きを「長期記憶」として脳と体に刻み込む必要があります。

長期記憶とは、一度覚えれば自転車の乗り方のように忘れることのない、体に染みついた記憶のことです。この状態に到達するためには、ただ漠然と練習を繰り返すだけでは不十分です。明確な目的意識を持った、段階的なトレーニングプランが不可欠です。以下に、マルセイユルーレットを完全に習得するための3段階の練習プランを提案します。このプランに沿って、毎日コツコツと練習を積み重ねていきましょう。

このトレーニングの鍵は、「トライ＆エラーを恐れない心」です。最初は必ず失敗します。しかし、その失敗一つひとつが、あなたの体を正しい動きへと導く貴重なデータとなるのです。諦めずに挑戦を続けることで、マルセイユルーレットはあなたの思考ではなく、あなたの「本能」の一部となるでしょう。

歴史に刻まれた伝説のマルセイユルーレット名場面集

マルセイユルーレットがなぜこれほどまでに人々を魅了するのか。その答えは、サッカー史に残る数々の伝説的なシーンの中にあります。ここでは、この技が最も輝いた、2つの象徴的な名場面をご紹介します。これらのプレーは、マルセイユルーレットが単なるフェイントではなく、試合の流れを決定づけるほどの力を持つことを証明しています。

ジネディーヌ・ジダン：CL史に残る、2人の名手を無力化した芸術的ルーレット

ジネディーヌ・ジダンのマルセイユルーレットを象徴する場面として、多くのファンの記憶に刻まれているのが、レアル・マドリード在籍時のUEFAチャンピオンズリーグ、古巣ユベントスとの一戦で見せたプレーです。タッチライン際でボールを受けたジダンに対し、ユベントスの2人のワールドクラスプレーヤー、パベル・ネドベドとアレッサンドロ・デル・ピエロが猛然とプレスをかけます。絶体絶命のピンチに見えました。

しかし、ジダンは冷静でした。彼はこぼれ球に先に触れると、まるで時間が止まったかのように滑らかなマルセイユルーレットを発動。まずネドベドを華麗にかわすと、その回転の勢いのまま、デル・ピエロの決死のスライディングタックルをもいなし、何事もなかったかのようにドリブルを開始したのです。このプレーは、技の「切れ味も美しさも別格」と評され、ファンからは「マジカル」「マエストロ」といった感嘆の声が上がりました。2人の名手をたった一つの動きで無力化したこの瞬間は、ジダンの天才性を凝縮した、まさに芸術作品と呼ぶにふさわしいものでした。

ティエリ・アンリ：GKさえも置き去りにした2003年FAカップの衝撃

マルセイユルーレットの応用範囲の広さと、その意外性を示したのが、アーセナルに所属していたティエリ・アンリが見せたプレーです。通常、この技は中盤やサイドでディフェンダーをかわすために使われます。しかしアンリは、その常識を覆しました。

2003年のFAカップ、対チェルシーFC戦。アンリはゴール前で相手ゴールキーパーのカルロ・クディチーニと1対1の状況を迎えます。誰もがシュートを打つと思ったその瞬間、アンリはなんとゴールキーパーに対してマルセイユルーレットを仕掛けたのです。完全に意表を突かれたクディチーニはなすすべなく、アンリは悠々と無人のゴールへボールを流し込みました。

このプレーの衝撃は計り知れません。それは、マルセイユルーレットが単に相手を「かわす」ための技術ではなく、相手の思考の裏をかく究極の「騙し技」でもあることを証明したからです。このアンリのプレーは、マルセイユルーレットの持つポテンシャルが、選手の創造力と大胆さによって無限に広がることを世界に示しました。

マルセイユルーレットを試合で効果的に使うための戦術的思考

マルセイユルーレットを個人のスキルとしてだけでなく、チームの戦術として捉えることで、その価値はさらに高まります。一つの華麗なプレーが、どのようにしてチーム全体のチャンスを創出するのでしょうか。ここでは、より高度な視点から、マルセイユルーレットを試合で効果的に使うための戦術的な考え方を探求します。

相手を密集させて逆サイドのスペースを創出する使い方

優れたプレーヤーがマルセイユルーレットを成功させるとき、その影響は目の前のディフェンダー1人だけにとどまりません。その華麗な動きは、周囲の相手選手たちの注意をも引きつけます。ボールホルダーに対して2人、3人と相手選手が引き寄せられることで、ピッチの他のエリアには何が生まれるでしょうか。答えは「広大なスペース」です。

例えば、左サイドで選手がマルセイユルーレットを成功させ、複数の相手選手をその場に釘付けにしたとします。その瞬間、守備バランスを崩した相手チームの逆サイド、つまり右サイドには大きなスペースが生まれています。そのスペースに味方選手が走り込むことで、決定的なチャンスが生まれるのです。このように、マルセイユルーレットは単なる1対1の勝利ではなく、相手の守備組織全体を歪ませ、味方を生かすための「おとり」としても機能する、極めて戦術的なプレーなのです。

ペナルティエリア付近で発動する究極の局面打開策

サッカーにおいて最も得点の可能性が高い場所、それがペナルティエリアです。しかし、そこは同時に、相手の守備が最も密集し、プレッシャーが厳しいエリアでもあります。このような極限状況でこそ、マルセイユルーレットは究極の局面打開策となり得ます。

ペナルティエリア付近でこの技を成功させることは、即座にシュートチャンスに繋がります。相手ディフェンダーとの距離が近いため、回転でわずかでもスペースを作り出せれば、それがそのまま決定機となるのです。また、密集地帯での回転は相手のファウルを誘発しやすく、ペナルティキック（PK）を獲得する可能性も高まります。ここで重要になるのが、先に解説した「リケルメ流」のボールタッチです。ボールを絶対に体から離さない精密なコントロールが、この危険なエリアで技を成功させるための生命線となります。リスクは高いですが、その見返りは試合を決定づけるゴールという、この上なく大きなものです。マルセイユルーレットをペナルティエリアで発動できるかどうかは、その選手の技術と勇気を測る、最高のリトマス試験紙と言えるでしょう。

↓こちらも合わせて確認してみてください↓

守備の基本と優先順位

４局面の優先順位

オフサイド

-新潟市豊栄地域のサッカークラブ-

↓Twitterで更新情報公開中♪↓

Twitterアカウントはこちらから

↓TikTokも更新中♪↓

TikTokアカウントはこちらから

↓お得なサッカー用品はこちら↓

サッカー用品はこちらから